美しい文章

今日の岩松の花
今日の岩松の花

 

 

教室の仕事の空き時間に今,夏目漱石の「こころ」を読んでいます。

 

当然の事ですが,夏目漱石は美しい文章を書きます。(笑)

文豪に対しても上から目線だと言われそうですね?

 

内容も名作といわれているものはやはり面白いのです。

「先生」の遺書の中で,幼い時から一緒に遊んだ女性に恋愛感情を抱けないということをこう説明しています。

 

「あなたも御承知でしょう。兄弟の間に恋の成立した例のないのを。私はこの公認された事実を勝手に布衍しているかも知れないが終始接触して親しくなり過ぎた男女の間には,恋に必要な刺激の起こる清新な感じが失われてしまうように考えています。香をかぎ得るのは香を焚きだした瞬間に限る如く,酒を味わうのは酒を飲み始めた刹那にある如く,恋の衝動にもこういう際どい一点が,時間の上に存在しているとしか思われないのです。一度平気で其所を通り抜けたら馴れれば馴れる程親しみが増すだけで,恋の神経はだんだん麻痺してくるだけです。」

 

これが夏目漱石自身の考えとは限りませんが,少なくとも小説の中の「先生」はそう考えているようです。

例えとかがもっともな感じで説得力があります。

 

エステルはこの部分を読んですぐに「あだち充」が思い浮かびました。

実に対照的だからです。彼の作品では恋愛の対象は全員幼馴染なのです。長い時間一緒に時間を過ごし育てた恋です。

あだち充は夏目漱石に挑戦していたのか!

 

エステルはあだち充の方が好きです。結婚してからも恋愛感情を保ちつづけるべきだと思うからです。幼馴染に恋愛感情が持てる人はそれができる人だと思います。

夏目漱石風にこれを説明すると,「親しみが増すにつれ恋の神経はだんだん研ぎ澄まされて行くべきです。」

 

こころの「先生」には申し訳ないですが,互いのことをほとんど知らないまま慌てて恋愛関係に落ちるのは全く愚かなことだと思います。

恋は焚き始めの香や飲み始めの酒の味のような瞬間的なものであってはならないと思うのです。

恋が瞬間的なものと考える人は結婚する前,瞬間は優しいけど,結婚した後,その長い時間,妻を召使にしかねません。

 

シェークスピアも,「性急な結婚は,とかくうまくゆかない」と語ったと言われています。この場合,論点が恋ではなく結婚ですが,大きくくくるとあだち充派です。

 

ただ,結婚してからも恋愛感情を保ち続けることは大切ですが,それが結婚関係の強固な土台になるというわけでもないと思います。それだけではもちません。もっと大切な土台が必要です。

 

恋愛も結婚も大切なものです。どう大切にすべきか,皆がもっと真剣に学び考え教えるべきだと思うのです。

 

夏目漱石も,この美しい文章を通してそれが言いたかったのではないかしら・・・

 

今日の楽しい気持ち

名作も漫画も楽しい。

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コメント: 2
  • #1

    ウラン (火曜日, 17 9月 2013 10:44)

    !!超!懐かしい題名!!

    恐らく、中学生の頃に、初めて、カルチャーショックを受けた、作品でした~。

    美しい文章だの、細部は殆ど記憶にないんですが、それまで、外に外に向かっていた感情が、初めて、内面に向かうようになった作品です。

    その分、悩みが増えて行った訳ですが、思春期には、必要な悩みではあった訳です。

    数えると、50年前デスヨ~。何もかにも、忘れることが多い昨今ですが、若かりし頃のことは、しっかり、憶えてますね~。

    中学に入ったとたん、漫画は一切卒業したので、二男が、未だに漫画を読む心理が,解らないんですが・・・・。

  • #2

    ark (火曜日, 17 9月 2013 23:38)

    ウランさん
    外に外に向かっていた感情が、初めて、内面に向かうようになった作品・・・・
    なるほど,そんな力がある作品なのですね。
    教室に沢山本があるので子供の頃読んだ本を懐かしく読むのですが,年をとってから読むと同じ本でもまた違う本になりますね。
    エステルは時間がないので読まないだけで,漫画は時間があれば読みますよ。いい漫画はいいです。(笑)
    子供の頃は月刊,週刊 少女コミック,少女フレンド,なかよし,花とゆめ・・・いろいろ読むのに忙しかったです。あの,「ガラスの仮面」はまだ続いているのでしょうか?月影先生はまだ生きておられるのでしょうか?月刊マガジンの「カペタ」は終わったみたいですね。二男さんは何を読まれるのでしょうか?知っている漫画ならウランさんにその良さを説明したいと思います(笑)